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kikiさんのとこの九州男児トラップ、おもしろ過ぎですー!
関西男児なトラを、との声にお応え…できてるかは分かりませんが、調子に乗ってちょこっと書いてみました。
思いっきり、kikiさんのお話の続きになってます(^^;
kikiさん、リンク許可とかいろいろ、ありがとうございますー。

*2/15追記
こちらに、方言トラシリーズの目次があります。

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はあはあ、ひどい目にあった…!
あ、詳細は、kikiんとこの日記を見てくれよな。
やっとのことで元のしゃべり方に戻ったと安堵した、その矢先に。
おれを、またもや災厄が襲った。
「キットン! 今度はおれに何飲ませたんやー!?」

キットンに「キューシュー茶」の真相を聞いた後。
キットンをぼこぼこにせんばかりの勢いで、おれは解毒薬を作らせようとしたが(キットンは「この素晴らしいお茶を毒呼ばわりするなんて!」と騒いでいたが…んなこと知ったこっちゃなか! …じゃなくて、知るかー!!)、やつはそんなすぐには無理だ、お茶の効果で温まった体が徐々に冷えればキューシュー訛りも出なくなる、と言い張るばかりだった。
仕方なく、この寒空の下、おれは水浴びを敢行した。
…さ、さっびーーーー!!

その後、風呂に飛び込み、なんとか人心地ついたわけだが。
くっそ、最初からこうしておけばよかったんだ。なんだってキットンなんかに茶を頼んだりしたのか。金輪際、あいつから受け取ったもんは無闇に口に入れたりしねえぞ!
おれは、大きく肩で息を吐きながら、キッチンに足を踏み入れた。
ちゃんと温まろうとするあまり、ちと長湯になっちまったのか、喉がからからだった。
キッチンの流しの前には、パステルがいた。
「あれ? トラップ、こんな時間にお風呂?」
「…ああ」
憮然としたまま答える。パステルは先ほどの騒動を知らないらしい。昼間から自室にこもって原稿書きに集中していたようだから、休憩にでも下りてきた、というところか。
ふと見ると、テーブルには、ジュースの入ったコップが置かれていた。
「わり、パステル、先にもらうぞ」と断りを入れるのと、「え?」とパステルが振り向いたのが同時。
そして、おれがコップの中の液体を飲み干すのと、パステルが「それ、わたし知らないよ?」と言うのが同時…って、何だと!?
「ほんまか? このジュース、おめえが飲も思て入れたんとちゃうんか!?」
(マジか? このジュース、おめえが飲もうと思って入れたんじゃねーのか!?)
「ち、違う…それよりトラップ、その口調…、どうしたの?」

ジュースだと信じて疑わなかった薄いオレンジ色をした液体の正体は…想像通りキットンが用意したものだった。なんでも、飲むとカンサイとかいう国の訛りが出ちまうらしい…。
「だからですねえ、あんたが茶を淹れろだの風呂を沸かせだのうるさく言うから、わたしは大事な実験を中断してたんですよ」
「んな危ねえもん、そこらへんに普通に置いとくなや、あほ!」
(んな危ねえもん、その辺りに普通に置いておくんじゃねえよ、バカ!)
「あんたこそ、貴重なカンサイの実の絞り汁を勝手に飲んでしまうなんて、どうしてくれるんですかっ!」
「やかましい! そんなんよか、これどないしたら元に戻んねん。また水浴びせえとかぬかすんやないやろな!?」
(うるせえ! んなことより、これどうしたら元に戻んだよ。また水浴びしろとかぬかすんじゃねえだろうな!?)
「知りませんよ、実験はまだ途中だったんですから。ああ、依頼主に実験続行不可能の報告をしに行かなければ…」
キットンはおれの手をばっとはらって、普段ならありえないスピードで、だだっとキッチンを出て行ってしまった。くそっ、逃げられた!

「ま、まあ、いいじゃない? 別に害があるわけじゃないんだし」
おれたちのやり取りを半ば呆然と見守っていたパステルが、恐る恐るという態で声をかけてきた。
「これのどこが害がないっちゅうんや! んな口調で喋ってみい、注目の的やないけ。はあ、もう外でしゃべられへん…どないしたらええんや…」
(これのどこが害がねえって言うんだ! んな口調で喋ってみろ、注目の的じゃねーか。はあ、もう外でしゃべれねえ…どうしたらいいんだ…)
がっくりと肩を落としたおれが、あまりにも不憫だったのか、パステルは
「じゃあ、わたしが話してあげるよ? ほら、おしゃべりしよう、そんな落ち込まないでさあ」
と言い出した。思わず顔を上げて、まじまじとパステルの顔を見てしまう。
「話する言うたかて、何しゃべったらええねん?」
(話するって言ったって、何をしゃべったらいいんだ?)
「それは…うーん…最近気になってること、とか」
「ふーん…おれが気にしとること言うたら…おめえのことだけや、パステル」
(ふーん…おれが気にしていることって言ったら…おめえのことだけだ、パステル)
「へ? わたし?」
「そうや。ここんとこ、むっちゃ寒いやろ? 女子供にはきっつい季節やから、風邪ひいたりせえへんか心配しとったんやで」
(そうだ。ここのところ、すっげー寒いだろ? 女子供にはきつい季節だあら、風邪ひいたりしねーか心配してたんだぞ)
「トラップ…」
「あ、せやけど、おめえにはええ防寒具があるさかい、こんな寒さくらいどってことあらへんかったりするんか? ほれ、毛糸のぱ…」
(あ、だけど、おめえにはいい防寒具があるから、こんな寒さくらいどうってことなかったりするのか? ほれ、毛糸のぱ…)
「っ~~!! もう! 人がせっかく親切にしてあげようと思ったのに! 知らないっ!!」
足音も荒くキッチンを出て行くパステルを、おれは笑いながら見送った。
どうやらパステルは、本気でおれのことを心配していてくれたみてーだな、へへん。
パステルで遊べたし、ほんのちょっとだけキットンを許してやる気になれた。ま、ほんのちょっとだけ、だけどな。

ちなみに、キットンは。
世の中には訛りを好む人々がいて、そういう人を振り向かせたいやつのために、安定した効果のある「訛り発現薬」を開発するように依頼されていたらしい。
深夜に帰宅したキットンの鞄からは、今度はいい香りのする旨そうな果物が顔を覗かせていて。
翌朝、深く考えずにそれに手を伸ばした人物がいた…というのは、また別の話。

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続きません…うちのサイトでは(笑)。
意味が分からないセリフがある方は、翻訳しますので、お知らせ下さい~。
翻訳テキスト付けました。まだ関西弁残ってるかもしれませんが(^^; (2/13記)

::追記::
この続きのお話は、沙石さんの日記で読むことができます。必見!

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